物語
リビングで亡霊を見た。
それを見るのは慣れたもので、私は気にせずに夕食を作って食べる。
亡霊は私の作った卵焼きを食べて美味しいと言った。
私は彼女の話を聞きながら、彼女と暮らした日々のことを考えた。
彼女は学生時代の私に「私達が一緒にいるために必要なものはなにか?」、と訪ねた。
それを見るのは慣れたもので、私は気にせずに夕食を作って食べる。
亡霊は私の作った卵焼きを食べて美味しいと言った。
私は彼女の話を聞きながら、彼女と暮らした日々のことを考えた。
彼女は学生時代の私に「私達が一緒にいるために必要なものはなにか?」、と訪ねた。
誰にも頼らずに稼ぐための小さな職場。
なんでも自由にできる静かなマンション。
と、私は答えた。
経済絶頂の最中、ふたりで始めたデザイン事務所の業績は上向いていた。
学生時代にふたりで話しをしていた南の島、中世の街、西海岸。
行きたい場所へ行って、見たいものを見て回った。
経済絶頂の最中、ふたりで始めたデザイン事務所の業績は上向いていた。
学生時代にふたりで話しをしていた南の島、中世の街、西海岸。
行きたい場所へ行って、見たいものを見て回った。
私は広いリビングでどうしてこうなったかを考えてみた。
ふたりが殆ど無敵だった時代は過ぎていた。
私はあの頃のようになんでも出来る気はしなくなっている。
この世界はとても複雑になって、ことをなすのは難しくなった。
以前にふたりが使っていたルールブックは無効になり
築いた城は崩れ去っていた。
「あなたと一緒にいるために必要なものはなに?」、と亡霊に聞いてみる。
今までにない新しい場所を準備する必要がある。
新しい場所は誰にも壊せない。誰の手も届かないような場所にしよう。
そして私は誰にも気づかれないように静かにことを運ぶ。
深く、深く、誰にも見つからないような場所で。